日本においても、北欧神話への興味や関心がだいぶ集まる様になってきました。
映画やドラマ、漫画やアニメにゲームなど、様々な文化作品において、そのモチーフが使われているからでしょう。
しかしながら、北欧神話の原典に関しては、まだほとんど知られていない様に思えます。
そこでここでは、北欧神話の原典『エッダ』に関して、詳しく解説したいと思います。
北欧神話の主な原典とされるのが『エッダ』という写本になります。
9世紀から13世紀にかけて、主にアイスランドで編纂されました。北方ゲルマンが語り継いできた伝説を、詩の形でまとめ上げたものです。
『詩のエッダ』と『スノッリのエッダ』の2種類があります。
そしてエッダは、北欧神話の中心となる最も重要な原典です。
天地創造から、神々と巨人族の壮絶な戦い、ラグナロクによる世界の滅亡などが語られます。
個々の物語がいつ成立したのか、また作者は誰なのか、といった点は詳しくわかっていません。
またエッダは、ゲルマン民族の神話の最も豊かな宝庫であり、北欧神話を研究する上での貴重な史料です。
エッダという言葉の意味に関しては、いくつかの仮説がありますがハッキリとはしていません。
「詩」「信条」また地名や称号などではないかと考えられています。
9〜13世紀頃に書かれた古詩を集めたものが『詩のエッダ』です。
まず1643年にアイスランドで写本が発見されます。これがコペンハーゲンの王立図書館に所蔵されたことで「王の写本」と呼ばれる様になりました。
これにいくつか類似する古詩を追加して、編纂したものが『詩のエッダ』です。「古エッダ」「韻文エッダ」とも呼ばれます。
その内容は、神話、英雄詩、格言詩の3つから成ります。それぞれの作者や成立年代はよくわかっていません。
「巫女の予言」「オーディンの箴言」「ヴァフスルーズニルの言葉」など、多くの詩によって構成されています。
13世紀のアイスランドの詩人、スノッリ・ストゥルソンが著した詩の教本が『スノッリのエッダ』です。
元々はただエッダと呼ばれていました。「王の写本」が発見されて以降は、区別のために「スノッリのエッダ」「散文エッダ」「新エッダ」などと呼ばれます。
スカルド詩という、独特の詩の用法が用いられています。8世紀頃から北欧で発展した詩の形式でした。
技巧的で複雑な詩形で、ケニングという比喩を駆使します。特定の人物の功績を讃えたり、皮肉、風刺、罵倒を浴びせたりもします。
そして「スノッリのエッダ」は、若手スカルド詩人のための、詩の入門書として書かれたものでもありました。
また「スノッリのエッダ」は3部構成のつくりで、第1部が「ギュルヴィの惑わし」、第2部が「詩語法」、第3部が「韻律一覧」となっています。
第1部「ギュルヴィの惑わし」は、スウェーデン王ギュルヴィが、旅の男に身をやつして神々の元を訪れる話です。彼の質問に神々が答える形で、様々な神話が語られます。
第2部「詩語法」では、酒宴の返礼としてアースガルズに招かれた海神エーギルが、詩の神ブラギに様々な質問をぶつけます。その過程でケニングはじめスカルド詩の用法が語られます。
第3部「韻律一覧」では、スノッリ自作の詩に具体的な解説がつけられています。
北欧神話の原典『エッダ』を、詳しく解説しました。
それは北方ゲルマンが語り継いできた伝説であり、神話を物語る詩集です。
『詩のエッダ』と『スノッリのエッダ』の2種類があります。
これらは、ゲルマン民族の神話の最も豊かな宝庫であり、また北欧神話を研究する上での貴重な史料です。