有史以前の太古の昔から、人間は芸術をつくってきました。
人はその精神性が出来上がっていくのと同時に、芸術をつくり出してきたと言えます。
ここでは、そんな原始美術とは何かわかりやすく解説したいと思います。
いわば芸術とは、人間を人間として特徴づける、基本的な要素のひとつと言えるでしょう。
僕は大学で西洋史を専攻していました。歴史や文化なら任せてください。
今から約200万年前に旧石器時代が始まります。
石器の出現から、農耕の開始までの時代をさします。
この原始時代の狩猟・採集生活の頃に、原始的な芸術作品が現れ始めます。
それが今からおよそ4万年ほど前の時期になります。それは人類史上における芸術の始まりでした。
道具の利用、火の利用、住居の利用、死者の埋葬などによって、様々なことを考え始めたからではないかと思われます。
それにより、人としての精神性が出来上がっていったのでしょう。
人類の文明の歴史がおよそ1万年ほどなので、あまりに途方もないスケールですね。
原始の時代には、壁画、塗装、彫刻といった芸術が生まれ始めます。
芸術は自然崇拝と強く結びついていました。
狩猟生活を通しての、動物をモチーフとしたものが多く表現されます。
動物はただの食料ではなく、崇拝の対象でもありました。
また彫刻では女性を型取ったものが見つかっており、豊穣多産のシンボルと思われます。
こうした女性像は地母神、今でいう女神の原型となりました。
今日に残る原始美術としては、ラスコーやアルタミラの洞窟壁画などが有名です。
原始から現代に至るまで、芸術というのは神話的イメージの体現でした。
原始美術を象徴するものが、洞窟壁画です。
文明が始まる有史以前のもので、洞窟や岩壁の壁面や天井に描かれました。
動物や狩猟の様子が主なモチーフでした。
そうした原始の壁画は世界各地で見つかっています。
ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、南米などです。
全く別々の場所にいた原始人類が、同じ様な芸術をつくっていたことが非常に興味深いです。
人間の精神性は、太古の昔から共通の基盤を持っていたということでしょう。
心理学の権威であるユングは、人間は無意識の深層に共通のパターンを持っていると考えました。
原始美術において、人間を型取った彫刻のほとんどが女性像です。
これは自然崇拝と結びつきます。
自然の恵みや豊かさを擬人化すると、生命を生み出すことのできる女性となるのです。
自然は母なる神として崇められ、多産や豊穣のシンボルとして女性像がつくらました。
この旧石器時代につくられた女性像を、ヴィーナス小像と呼びます。
また動物の彫刻も、自然崇拝・動物崇拝をよく象徴しています。
女神信仰は非常に古く、有史以前からあった訳です。男神が現れ出すのは、文明が始まって以降になります。
原始美術をわかりやすく解説しました。
それは旧石器時代に始まった、人類最古の芸術様式です。
ラスコーやアルタミラの洞窟壁画など、今でも現存しているものもあります。
太古の昔、人類はその始まりの頃から芸術作品をつくってきたのです。