ポップアートとは何でしょうか?
それは20世紀から始まった、これまでにない前衛的な芸術様式でした。
現代美術を語る際にも、その存在は欠かすことができません。
ここでは、そんなポップアートをわかりやすく解説しました。
その特徴から歴史的な時代背景に至るまで、詳しく紹介しています。
僕は大学で西洋史を専攻していました。西洋の文化や歴史なら任せてください。
ポップアートとは何か?
1960年代頃から、アメリカを中心として盛んになった芸術様式がポップアートです。
20世紀という時代を特徴付ける、大量生産・大量消費をテーマとしています。大量生産品の雑誌や広告、食料品、漫画、写真などをモチーフとして表現されます。
- 大量生産・大量消費が主なテーマ
- 大衆文化との融合
- 芸術の中心地としてのニューヨーク
また大衆文化を芸術に取り込んだ、という点が大きなポイントです。
映画、漫画、アニメ、ポピュラー音楽などのサブカルチャーを、作品の中に色濃く反映させました。
大量生産・大量消費
20世紀という時代は、科学技術の発達により、かつてない変化が起きた時代です。
商品の生産と流通はめざましく進歩し、自動車や家電といった製品が一般家庭にも普及していきます。
これにより、人々の生活水準は飛躍的に向上し、今までとは比較にならないほど、豊かな生活が手に入りました。
そしてそれは、大量生産・大量消費の時代の始まりでした。
誰もが毎日のように大量の製品に囲まれ、それらを消費し、テレビや雑誌でその広告にさらされる、そんな生活が一般的になっていきます。
ポップアートの運動は、この大量生産・大量消費の様相こそ、現代社会の風景そのものだと捉えました。
現代の社会は至る所に広告が溢れ返り、商品よりもむしろ広告が主役となっています。
大衆文化との融合
ポップアートの特徴として外せないのが、大衆文化との融合です。
20世紀という時代は、映画、ポピュラー音楽、マンガ、アニメなど、大衆文化が台頭していった時代です。
ポップアートは、それらを表現の中心に、大胆に取り込んでいったのです。
時代の潮流に乗った、意図的な世俗化・俗物化だったと言えます。
こうした、サブカルチャーとの融合は、美術史においても重要な転換点でした。
大衆文化を取り込んだことで、ポップアートは非常にとっつきやすい芸術となりました。
芸術の中心地ニューヨーク
ポップアートは、アメリカのニューヨークを中心地とした芸術運動でした。
これは、20世紀における現代美術の特徴でもあります。
まず1940年代に、抽象表現主義という一大芸術運動が起こります。この運動により、パリに変わりニューヨークが芸術の中心地となっていきました。
その背景としては、第二次大戦の戦火を避けて、ヨーロッパから大勢の芸術家たちが移住してきたことがあります。
美術家、音楽家、建築家、デザイナーなど多くの文化人がやってきたことで、アメリカにおける芸術活動が先鋭化したのです。
音楽やファッションをはじめ、現代の文化は大都市から生み出されてきました。
ポップアートを代表する芸術家たち
ポップアートは、抽象表現主義への反発として始まりました。
大量生産品をモチーフとすることで、表面的で俗物的な性格を作品に持たせました。
それは、意図的な芸術らしさの排除でした。
哲学や思想などを排し、記号の反復やレディメイド(既製品の利用)など、わざと没個性的で機械的な要素を取り込んでいったのです。
それらは、ダダイスムなどの「反芸術」の流れをくんだものでした。
芸術的な要素を弱めて、俗物性や退廃性を強調することで、今までになかった表現を行ったのです。
これまでの芸術とは逆の発想であり、まさに前衛的と言えるものでした。
ポップアートの代表的な芸術家は、ウォーホル、リキテンシュタインなどです。
ウォーホル
アンディ・ウォーホルは、ポップアートを象徴するアメリカの芸術家です。
現代美術において、最も有名な存在だと言えます。
ロックバンドのプロデュースや映画制作なども手掛け、マルチに幅広い分野で活躍しました。
シルクスクリーンという、同じ図版を大量に生産できる技法を用いた作品が有名です。
市場の既製品、有名人のイメージなど世俗的なシンボルを作品化しました。
そして、大量消費、非人間性、陳腐さ、空虚さ、といった要素を盛り込みました。
ウォーホルの作品は、まさに大量消費や大衆文化を象徴するものでした。
現代における資本主義とは一体何でしょうか?その代表が新自由主義であり、一切全てを商品化していく「市場原理主義」です。ひたすらに効率と利益が優先され、人間性や共存性は置き去りにされました。その際限の無さは、まさしく巨大な怪物です。
リキテンシュタイン
ロイ・リキテンスタインは、ポップアートを代表するアメリカの芸術家です。
アンディ・ウォーホルと共に、ポップアートの芸術運動の中心人物でした。
漫画のコマを、印刷インクのドットまでわかるほど、拡大して描いた作品などで有名です。
漫画の持つ単純ながら強烈な表現力を、油彩で表現したのです。
それはまさに大衆文化と芸術との融合でした。
絵画だけでなく、彫刻や壁画といった作品も数多く制作しています。
新宿のオフィス街に、リキテンシュタインの彫刻作品『Tokyo Brushstrokes』がありますよ。
大阪は心斎橋の一角に、リキテンシュタインの大作があります。アメリカ村の北のはずれに建てられた、空気冷却塔の壁面に描かれ、1998年に完成したものです。広告の様に街中に溶け込んでいますが、紛れもないポップアート作品です。『OSAKA VICKI(大阪ヴィッキー)』という作品で、リキテンシュタインの中でも世界最大級です。
まとめ
ポップアートをわかりやすく解説しました。
それは、大量消費の時代を象徴する芸術様式でした。
また、芸術の世俗化・俗物化による、新たな表現方法の開拓だったとも言えます。
芸術家たちは、時代の大きな潮流を捉え、それを様々な独自の方法で表現したのです。
そしてポップアートは、現代の芸術においても今なお影響を与え続けています。