ヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、その生涯で数百通もの手紙を残しました。その多くは、最愛の弟テオに宛てたものです。

これらの手紙には、画家としての苦悩だけでなく、一人の人間としての喜びや孤独、希望が記されていました。

ゴッホという人物を知るうえで、貴重な一次資料といえるでしょう。

この記事では、公開されている原文をもとに、書簡001の日本語訳と背景をわかりやすく紹介します。

歴史や文化もわかる 西洋美術史の教科書

背景

今回ご紹介するのは、19歳のゴッホが15歳の弟テオへ送った手紙です。このときのゴッホはまだ画家ではありません。

このときはオランダのハーグで画商見習いとして働いており、弟テオは学生でした。

数日前まで一緒に過ごしていたテオが実家へ帰り、その後に書かれた手紙です。

まだ画家になるずっと前の、若き日のゴッホの声に耳を傾けてみましょう。

書簡001|1872年9月29日

親愛なるテオへ

手紙をありがとう。

君が無事に家へ帰ったと聞いて安心したよ。

君が帰ったあと、ここは少し寂しく感じられる。

一緒に過ごした数日間は本当に楽しかった。

天気はあまり良くなかったけれど、それでもいろいろな場所へ出かけることができたね。

こちらでは最近ずっと雨や風の日が続いているよ。

君も毎日の通学は大変だと思う。

昨日は町のお祭りに合わせて競走が行われたけれども、花火や夜の催しは悪天候のため延期になってしまった。

だから、あの天気の中で無理に残らなくて正解だったと思うよ。

ハーネベーク家やローズ家のみなさんも、君によろしくと言っていた。

ではまた近いうちに手紙を書いてくれ。

君を愛する兄ヴィンセントより

考察

この最初の手紙を読むと、「狂気の天才」という一般的なイメージとは、かなり違う人物像が見えてくると思います。

そこにいるのは、弟を気遣う誠実な兄です。

そして19歳という年齢を考えると、その文章は驚くほど落ち着いています。

軽薄さや若者らしい衝動性がほとんどなく、誠実で礼儀正しい印象を受けます。

実際にゴッホは非常に勤勉で、家族思いで、真面目すぎるくらい真面目な人物でした。

その真面目さが後に、愚直なまでの芸術への没頭につながっていくのでした。

【参考資料】
・The Letters of Vincent van Gogh(Van Gogh Museum / Huygens ING)
https://vangoghletters.org/

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