北欧神話とは一体何でしょうか?
聖書やギリシア神話に次いで、西洋世界における文化的・精神的な基盤となっています。
それは、まさにファンタジーの起源とも言うべきものです。
ここではそんな北欧神話を、わかりやすく解説しました。
僕はアーティストでブロガーで作家をしている、日下晃と申します。
もともと僕は大学では西洋史専攻でした。そのため西洋の歴史や文化を、わかりやすく紹介するのが得意です。
また神話も専門で、このブログでも人気コンテンツとなっています。
中身のクオリティにおいても、どこにも負けていないと自負しています。
そんな訳で、北欧神話を多くの人に楽しんでもらえればと考えています。
それでは、はるか遠い昔に北欧の地で培われた、独特の世界観を感じてみてください。
西洋の歴史や文化なら任せてください。
北欧神話とは、スカンディナビア半島、アイスランド、デンマーク、ドイツなどに広がっていた、ゲルマン人たちに伝わる神話体系です。
世界の創造から滅亡までを物語る、神々と英雄の伝説です。
そして北欧神話は、様々な歌や詩、散文の形で後世に残されました。
まず北欧神話を理解する上で重要なのが、ゲルマン人です。
古代において、ゲルマニアと呼ばれる北部の地域に住まい、ローマ帝国からも独立を保っていました。
カエサルの『ガリア戦記』にも記述されています。
西ローマ帝国の崩壊や、ヴァイキングの侵攻など、その後の西欧世界の形成に大きく影響しました。
中世以降、ヨーロッパ諸国は次々とキリスト教化されていきました。
これに対して、アイスランドやスカンディナビア半島のゲルマン人たちは、10世紀頃までキリスト教化されず、古くからの信仰を残していました。
その北方ゲルマン人たちの、風習や精神が集約された物語が、北欧神話なのです。
9〜12世紀頃にヨーロッパ各地に侵入した、北方ゲルマン人の総称がヴァイキングである。優れた航海術を持ち、各地で略奪を行う一方で、商業活動も盛んに行なっていた。そして各地に植民すると、ノルマン系の王朝が次々と建国された。
北欧神話は、独特の世界観・宇宙観を持ちます。
まず9つの世界から成り立っており、これらの世界は、世界樹ユグドラシルによって繋がっています。
神々の住まうアースガルズを最上位として、人間の住まうミズガルズ、極寒の氷の世界であるニヴルヘイムなどが存在します。
北欧神話において、世界はひとつの大きな樹であると考えられています。
世界そのものを体現する、その途方もなく大きな樹を中心として、9つの世界が存在しています。
そしてこの巨大な樹が、世界樹ユグドラシルです。
エッダによると、ユグドラシルは巨大なトネリコの樹であるとされます。
3つの根はそれぞれ、ウルズの泉、フヴェルゲルミル、ミーミルの泉という、3つの泉に至ります。
北欧神話の主な原典とされるのが『エッダ』という写本である。13世紀のアイスランドで編纂されたこの文献は、北方ゲルマンが語り継いできた伝説を、詩の形でまとめ上げた。「古エッダ(詩のエッダ)」と「スノッリのエッダ」の2種類がある。古ノルド語で書かれた。
それでは、北欧神話の世界を形づくる、9つの世界を紹介したいと思います。
この9つの世界には、様々な種族が住んでいます。
これらの世界を覆う天の空は、始祖の巨人ユミルの頭蓋骨でつくられており、複数の層を成しています。
その天空の上を、太陽と月を運ぶ馬車が、狼に追われながら走っています。また世界の東西南北の端を、4人のドワーフが支えています。
さらに天の北には鷲の姿をした巨人フレスヴェルグがいて、その羽ばたきが風となって世界を巡ります。
この様に北欧神話の世界観は、とてもユニークでドラマチックなものなのです。
アース神族たちの住まう国がアースガルズです。
アース神族とは、主神オーディンを長とする神々で、北欧神話における中心的な存在です。
この神々の国は、人間たちの住む世界ミズガルズと、虹の橋ビフレストによって結ばれています。
ヴァン神族たちが住まう国がヴァナヘイムです。
ヴァン神族とは、豊穣と平和をつかさどる神々です。
かつてアース神族とは対立し、戦争を行っていました。
その後に和解し、両者は同盟関係にあると考えられます。
その名は「光り輝く者」を意味します。
人間たちの住まう国がミズガルズです。
天上界のアースガルズ、地下世界のニヴルヘイムやヘルヘイム、
その中間に位置しています。
光の妖精たちの住まう国です。
この光の妖精とは、エルフのことです。
北欧神話ではアールヴと呼ばれ、アールヴヘイムに住んでいます。
またヴァン神族のフレイが、エルフたちの長とされます。
ドワーフたちの住まう国が、ニザヴェリールです。
スヴァルトアールヴヘイムと言われることもあります。
また北欧神話では、ドワーフはドヴェルグと呼ばれます。
ヨトゥンと呼ばれる巨人族の住まう国が、ヨトゥンヘイムです。
巨人たちは、神々に匹敵する強大な力を持ちます。
また神々とは敵対関係にあり、衝突を繰り返します。
極寒の地にある氷の国がニヴルヘイムです。
地下世界にあるとされ、天地創造以前から存在しています。
ムスペルヘイムとは対をなします。
死者たちの住まう冥府の世界がヘルヘイムです。
地下世界にあるとされます。
女巨人のヘルが治めています。
世界の果てにある炎の国がムスペルヘイムです。
スルトという炎の巨人が、その入り口を守っています。
天地創造以前から存在しており、ニヴルヘイムとは対をなします。
エッダと共に、北欧神話の原典とされるのが『サガ』である。12世紀から14世紀頃のアイスランドで発展した、散文形式の長編文学である。古ノルド語で書かれた。エッダが神話を主な題材とするのに対して、『サガ』は歴史的な出来事を主な題材とした。
北欧神話の神々は、勇ましく猛々しいのが特徴のひとつです。
主神オーディンをはじめ、雷神トール、戦神テュールなど戦いにまつわる神が多いです。
ゲルマン人の戦士階級を中心として、信奉されてきた神話であることが伺われます。
その基本的なあらすじを、わかりやすく解説していきます。
世界の始まりには、氷と炎しか存在しませんでした。
すなわちニヴルヘイムの氷の世界と、ムスペルヘイムの炎の世界です。
その両者が混じってできた霜の中から、
すべての始まりとなった原初の巨人、ユミルが生み出されました。
このとき、アウズンブラという牝牛も一緒に生まれます。
ユミルは単独で、ヨトゥンの巨人たちを生み出していきました。
またアウズンブラからは、ブーリという最初の神が生まれます。
ユミルは『進撃の巨人』でもお馴染みの始祖の巨人ですね。また仏教の閻魔(えんま)、インド神話のヤマと同じ起源を持ちます。
神と巨人が交わった子孫から、オーディン、ヴィリ、ヴェーという3人の神が生まれました。
彼らはユミルを殺害し、その体を利用して世界を創造しました。
体で大地をつくり、血液で海や川を、骨や歯から岩や石を、
脳で雲を、そして頭蓋骨で天空をつくり出しました。
そこにムスペルヘイムの火花から、太陽と月、星々をつくって置きました。
神々は海辺の流木から、アスクとエンブラという人間の男女を生み出しました。
そして神々は小人や妖精たちもつくりました。
そして人間の世界であるミズガルズ、巨人族の世界であるヨトゥンヘイム、神々の世界であるアースガルズをつくりました。
オーディンを長とするアース神族と、もう一つの神々であるヴァン神族との間で、あるとき抗争が勃発しました。
長引く戦いに疲れた神々は、人質交換によって、この戦争を終結させます。
それ以降の両者は、同盟関係にあったと考えられます。
北欧神話における最高神がオーディンです。
アース神族の長にして、戦争と死を司る神であり、魔術と知識に長けた神々の父です。
オーディンは知識に貪欲で、しばしば世界を旅して回っています。
知識を得るためにミーミルの泉を飲みますが、その代償として片目を失いました。
またルーン文字の秘密を得るために、自らに槍を突き刺し、世界樹ユグドラシルに9日間首を吊りました。
それからも各地を放浪しては、様々な知識や魔法の品を得るのでした。
北方ゲルマンが使用していた、独自の文字体系がルーン文字である。北欧神話においては、オーディンが見出した呪力を持つ特別な文字とされる。愛のルーン、勝利のルーン、知恵のルーンなどがある。この文字を刻むことで、様々な効果を発揮するとされた。
北欧神話において、最も強いとされるのが雷神トールです。
オーディンの息子であり、雷を司る神です。
ミョルニルというハンマーを武器として戦い、ほとんどの敵を一撃のもとに葬り去る、圧倒的な強さを持っていました。
神々や人間のために、幾度も巨人たちとの戦いを繰り広げました。
輝ける光の神がバルドルです。
オーディンと女神フリッグの息子で、神々の中でもっとも賢明で美しく、万人に愛されたとされます。
それに嫉妬したロキの謀略によって、命を落としました。
神々は冥界からバルドルを連れ戻そうと試みますが、これもロキにより阻まれました。
ロキは混沌をもたらす悪戯好きの神です。
純粋な巨人族ですが、オーディンと義兄弟の契約を交わしており、アースガルズに神として住んでいます。
魔術に長けていて、様々な姿に自在に変身できます。
バルドルの殺害後は、神々とは敵対することが多くなっていきました。
そして神々はロキを捕らえると、地下に幽閉して拘束します。
そこで顔に蛇の毒が滴り落ちるという、拷問を与えたのでした。
北欧神話における終末の日、それがラグナロクです。
これは、神々と巨人族との最終戦争でもあります。
まず不吉な前兆から恐ろしい冬が始まり、多くの生き物が死に絶えます。
そして巨人族や死者の軍団が、アースガルズへと一斉に攻め入ってきます。
神々はこれを迎え撃ち、両軍はヴィーグリーズの野で激突するのでした。
この戦争によって、神々も人間も、あらゆる生命が死に絶え、世界は炎に包まれて一旦滅んでしまいます。
しかし完全なる終焉ではなく、新たなる時代が幕を開けます。
世界がまた再生されていき、ラグナロクを生き抜いた者たちが見つかります。
そして生き残った神々と人間たちにより、また新しい世界が始まっていくのでした。
さらに詳しく学びたい方は、僕の著作を読んで頂ければと思います。北欧神話の参考書として、これまでに無いクオリティであると自負しています。
北欧神話の基本をわかりやすく解説しました。
それは独特の世界観を持つ、北方ゲルマン民族の神話体系です。
ゲルマン人たちの、風習や精神が集約された物語であり、
北方の厳しい自然環境に、育まれたものだと伺わせます。
そしてその魅力的な世界観や物語は、現代においても様々な文化に影響を与えています。