「MMTって最近よく聞くけど、一体何なの?」
経済や政治の話題で、やたらと出てくる様になったMMT。
誰でも一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか?
実際、現代社会において非常に重要な知見です。
しかし、何かとわかりづらい話だと思います。
「ただでさえ経済の話は苦手」「とっつきにくい」「専門用語ばかりで頭に入ってこない」
という人がほとんどではないでしょうか?
実際その通りで、経済学というのは、やたらややこしい説明が多いです。
そこでここでは、MMTをとてもやさしく、且つ基本から理解できる様な解説をつくってみました。
基本がわかれば、MMTは実際とてもシンプルです。別にそこまで難しくない話だと、わかると思いますよ。
MMTとは何か?
現代貨幣理論とは、ケインズ経済学・ポストケインズ派経済学の流れを汲むマクロ経済学理論の一つである。 変動相場制で自国通貨を有している国家の政府は通貨発行で支出可能なため、税収や自国通貨建ての政府債務ではなく、主にインフレ率に基づく財政規律が必要であるという主張をしている。
Wikipedia
MMTとは経済学における理論のひとつです。
Modern Monetary Theory(モダン・マネタリー・セオリー)の略称で、日本語にすると「現代貨幣理論」となります。
アメリカを発祥とし、2018年頃から広まり始めました。
特にアメリカと日本において、政策論争を巻き起こしています。
異端の学説だとも言われますが、ケインズ経済学の集大成であり、むしろ王道であると言えます。
MMTの根幹は「貨幣の発行」!
まずMMTの最も基本となる考え方を抑えましょう。
それは「政府は貨幣を発行できる」ということです。
当たり前じゃんと突っ込まれそうですが、これが本当にMMTの根幹であり最重要ポイントです。
まさに現代の貨幣についての理論、現代貨幣理論だという訳です。
なのでMMTとは、超当たり前のことを、超当たり前に言っているだけなんですね。
とてもシンプルではないでしょうか?
MMTは政策ではなく説明である!
MMTを政策プランだと思っている人も多いです。
元財務大臣の麻生太郎さんなどは、「日本をMMTの実験場にするつもりはない」と言っていました。
いやいや、そうじゃないですよと。
MMTはただの理論です。「現代貨幣理論」なのですから。つまり事象の説明にすぎません。
ただこの世界で起きていることの説明です。
「相対性理論をやるつもりはない」「進化論を試すつもりはない」とは言わないですよね?
つまり、やるやらないで語るものではないのです。
その説明をどう受け取りどう考えるか、ただそれだけです。
財源は生み出せる!財政破綻はあり得ない!
ではMMTの基本がわかると、どうなるのでしょうか?
まず「財源どうするんだ!」という財源論が不要になります。
なぜなら、政府は貨幣を発行できるからです。
財政破綻という世紀のデマ
政府に通貨発行権があれば、政府の意思決定に基づき通貨を発行できます。
つまり財源は調達する必要などなく、政府が自ら生み出せるのです。
そうすると財政破綻も、机上の空論であることがわかります。
お金を生み出せるのだから、「お金ありませーん」という状況は起こり得ません。
財務省による官僚的な言い回しを借りると、
「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。」
という具合になります。
19世紀に通貨の管理体制として、金本位制が採用されました。貨幣の発行には、本物の金を担保としていたのです。しかし金の量には限りがあるため、20世紀に入ると行き詰まりをみせます。そして1970年代のニクソンショックにより金本位制は廃止され、管理通貨制度へと移行しました。
国の借金とは貨幣の発行である!
貨幣発行に関して、超重要なポイントがあります。
それは、国の借金こそが貨幣発行である、ということです。
いきなり言われても「?」かもしれません。
しかし、これこそがMMTが明らかにした、革命的とも言える事実認識なのです。
現代における貨幣の発行
お金は印刷局で生まれているのではありません。
政府が債務を負うときに、同時にお金が生まれるのです。
正確には国債発行のプロセスの中で、政府・日銀・銀行がやりとりをして、貨幣と債務が生み出されます。
貨幣と債務は表と裏です。必ず同時に存在します。
つまり政府が債務を負うことで、貨幣が供給されるのです。
財務省やマスメディアはこの点を理解していません。
国債発行を、貨幣供給ではなく資金調達だと思い込んでいます。
信用創造
この現代における貨幣発行の仕組みを、信用創造と言います。
このとき実物の担保はいらず、政府の意思で貨幣を自由に生み出せます。
銀行預金の記録に、電子情報として打ち込むだけなのです。
そして必ず、債務と共に生み出されるのがポイントです。
また企業など民間が借り入れるときも、すべて信用創造によって貨幣が生み出されています。
日本だけでなく、世界のどの国も基本的な仕組みは同じですよ。
そして、こうした政府による通貨の管理体制を、管理通貨制度と言います。
管理通貨制度は、現代のお金の仕組みそのものです。これのもとでは、金などの現物の担保が無くとも、政府は貨幣を自由に発行できます。通貨発行権や徴税権を持つ政府の存在そのものが、絶対的な信用であり担保なのです。信用を担保に貨幣を生み出す。故に現代における貨幣発行は、信用創造と呼ばれるのです。
MMTに関してよくある誤解
日本やアメリカで論争を巻き起こしているMMTには、実に様々な批判があります。
トンデモ理論だ、バラマキだ、信認が崩れる、と言ったものが多いです。
経済・財政の基本が理解できると、それらは的外れだとすぐにわかります。
そんな批判の中でも、よくある誤解をピックアップしてみました。
お金を無限につくれる
「お金をいくらでも無限につくれる訳がない!」
よくある批判ですが、当たり前です。MMTでそんな主張はされていません。
上限はちゃんとあります。インフレ率という指標です。物価上昇の度合いを示す指標ですね。
これによる目標値を、インフレターゲットと言います。
日本政府では長らく、プライマリーバランスを財政規律の目安にしていますが、大きな間違いです。
本当の財政規律の目安は、インフレ率になります。
インフレターゲット
中央銀行がインフレ率(物価上昇率)の数値目標を設け、市中の通貨量を制御することで緩やかなインフレを起こし、安定的な経済成長につなげる金融政策。
日本大百科全書
このインフレ率の目標を上限として、財政出動による貨幣発行をしていくことができるのです。
ちなみに日本の場合、インフレ率の目標は2%に設定されています。
つまり貨幣発行の上限は金額ではなく、需要と供給のバランスで決まるということです。
また重要なのは、「限られた財源を何に使うかよく考える」その基本は何も変わらないということです。
ただその上限と規模が、今まで考えられていたより遥かに大きく余裕がある、ということなんです。
税金がなくてもいい
「それなら無税国家でいいじゃないか!」
これもよく言われる批判ですね。
MMTで税金はいらないという主張はありません。
むしろ国家のシステムとして、不可欠な要素だと言っています。
無税国家というのは存在できません。
それにより国家や通貨への信用が生まれるからです。
税は財源というよりも、景気調節や格差是正のためにある。
それがMMTの税金に対する基本的なスタンスです。
ハイパーインフレになる
「むやみに財政出動をしたらハイパーインフレになる!」
これもよくありますが、全くの的外れです。
ハイパーインフレとは、超急激な物価上昇のことです。
基本的に、国内の供給能力が壊滅的なときに起こります。
つまりは敗戦国や途上国で起こるものなんですね。
先進主要国で起きる可能性はゼロだと言えます。起きた例もありません。
下の引用を見てください。
近年自国通貨建て国債がデフォルトした新興市場国とは異なり、日本は変動相場制の下で、強固な対外バランスもあって国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパー・インフレの懸念はゼロに等しい。
財務省 外国格付け会社宛意見書要旨より
財務省の公文書にも、「ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」と記載されているんです。
財務省の公式サイトからも確認できますよ。
信用リスクが高まる
「むやみに財政出動をすると、通貨の信認や市場の信認が落ちる!」
これもとてもよくある批判です。
財政出動を拡大して政府の債務が増えると、信用リスクが高まるという意見ですね。
金利が上がる、インフレが制御不能になる、通貨や国債の信認が下がる、といった具合です。
はい、全部気のせいです。
長年同じことが言われ続けてきましたが、そんなことは起きませんでした。
そして明確なデータと共に、誤りだったと明白になったのです。
また基本に帰りましょう、政府は貨幣を発行できます。
それは絶対の返済能力を意味します。つまり最強の信用があるのです。
故に通貨の信認も、市場の信認も磐石なのです。
下のグラフを見てください。
もし政府債務の拡大が、信用リスクにつながるのであれば、金利も上がってきているはずです。
金利は信用不安があるほど、上がるものだからです。
実際のところどうでしょう?
政府債務が増えても、金利は上がるどころか、下がり続けていますね。
つまり政府債務の拡大が、信用リスクにつながることはない、それがデータでも明確に証明されているのです。
まとめ
MMTをわかりやすく解説しました。
別に難しくない、わりと簡単な話ではないでしょうか?
基本さえ掴めば、とてもシンプルで理解しやすい理論だと思います。
「政府は貨幣を発行できる」という基本ですね。
そしてそれがわかると、現代のお金の仕組み、経済や財政の仕組みが見えてきます。