北欧神話

勇ましく猛々しい!北欧神話の神々を一覧で総まとめ!

今日においては、北欧神話が広く知られる様になりました。

多くの人気作品の中にも、そのモチーフが見て取れます。

その知名度はさらに上がっており、「もっと北欧神話を知りたい」という人も増えていると思います。

ここでは、そんな北欧神話に登場する神々をまとめて一挙に紹介しました。

彼らはとても勇猛で力強く、様々な個性を持っています。

北欧神話の神々をまとめて一挙に紹介!

僕はアーティストでブロガーで作家をしている、日下晃と申します。

もともと大学では西洋史専攻でした。そのため西洋の歴史や文化を、わかりやすく紹介するのが得意です。

そして北欧神話やギリシア神話も詳しく学んでおり、このブログでも人気コンテンツとなっています。

中身のクオリティにおいても、どこにも負けていないと自負しています。

そんな訳で、北欧神話を多くの人に楽しんでもらえればと考えています。

またファンタジー好きなら、まず間違いなく楽しめる内容だと思います。

それでは、はるか遠い昔に北欧の地で培われた、独特の世界観を感じてみてください。

北欧神話はとても魅力に溢れていますよ。

『北欧神話の武器や道具』

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北欧神話とは何か?

北欧神話とは、スカンディナビア半島、アイスランド、デンマーク、ドイツなどに広がっていた、北方ゲルマン人たちに伝わる神話体系です。

北欧神話の特徴
  • 北方のゲルマン民族の神話である
  • 独特の世界観・宇宙観を持つ
  • 荒々しくも勇猛な神々と終末思想

世界の創造から滅亡までを物語る、神々と英雄の伝説です。

中世以降、ヨーロッパ諸国は次々とキリスト教化されていきました。

これに対して、アイスランドやスカンディナビア半島のゲルマン人たちは、10世紀頃までキリスト教化されず、古くからの信仰を残していました。

そして北欧神話は様々な歌や詩、散文の形で後世に残されました。

『図解 北欧神話 F‐Files 』

北欧神話に登場する神々

それでは、北欧神話に登場する神々を見ていきましょう。

神々は主に3つの種族が存在し、アース神族ヴァン神族巨人族(ヨトゥン)から成ります。

また北欧神話の神々は、勇ましく猛々しいのが特徴です。

主神オーディンをはじめ、雷神トール、戦神テュールなど戦いにまつわる神が多いです。

ゲルマン人の戦士階級を中心として、信奉されてきた神話であることが伺われます。

アース神族

主神オーディンを長とする神々が、アース神族です。

世界の中心である、アースガルズという国に住まうとされます。

この神々の国は、人間たちの住む世界ミズガルズと、虹の橋ビフレストによって結ばれています。

アース神族は北欧神話における最高位の神々であり、その中心的な存在です。

オーディン

北欧神話における最高神がオーディンです。

アース神族の長にして、戦争と死を司る神であり、魔術と知識に長けた神々の父です。

神と巨人のハーフでもあります。

兄妹と共に原始の巨人ユミルを殺し、その体を利用して世界を創造しました。

グングニルという魔法の槍が武器で、8本足の愛馬スレイプニルに跨ります。

2羽のカラス、フギンとムニンを飛ばし、世界中の情報を得ています。またゲリとフレキという、2匹の狼を従えます。

ミーミルの泉を飲むことで知識を会得しますが、その代償として片目を失いました。

またルーン文字の秘密を得るために、自身の身体に槍を突き刺し、世界樹ユグドラシルに9日間首を吊りました。

オーディンの住まう宮殿ヴァルハラには、来たる最終戦争ラグナロクに備え、戦士たちの魂が集められています。

そのラグナロクにおいて、オーディンは巨浪フェンリルと対決し、敗北して飲み込まれました。

英語で水曜日を意味する「Wednesday」の由来でもあります。「オーディンの日」を意味します。

トール

北欧神話において最も強いとされるのが、雷神トールです。

英語ではソーになります。

オーディンの息子であり、アース神族における最強の戦士です。

アースメギンという神力により、天下無双の力を誇りました。

雷をつかさどり、巨人たちをはじめ多くの強大な敵を打ち倒します。

その強さは圧倒的で、ほとんどの敵を一撃のもとに葬り去っています。

ミョルニル(トールハンマー、ムジョルニア)というハンマーを武器として戦いました。

またミョルニルを握るための鉄の手袋ヤールングレイプル、力を倍増させる力帯メギンギョルズを装備しています。

2頭の山羊が引く戦車に乗って、天空を駆け巡りました。

最終戦争ラグナロクにおいては、宿敵ヨルムンガンドと戦い、相打ちとなって果てます。

マーベル作品でも有名ですね。英語で木曜日をあらわす「Thursday」の由来となりました。「トールの日」を意味します。また元素のトリウムの由来でもあります。

テュール

隻腕の軍神がテュールです。

オーディンもしくは巨人の息子で、古代から信仰されてきた戦争を司る神です。

大胆で賢く、戦いの勝敗を決する役割を持ちます。

エッダによると、「テュールの名を剣の柄や峰に彫って、その名を2度唱えることで勝利を手にできる」と記されています。

巨浪フェンリルを捕縛する際に、その右手を失いました。

他の神々が皆フェンリルを恐れる中で、テュールだけは真っ向から対峙し、その拘束に成功したのです。

最終戦争ラグナロクにおいては、冥府の番犬ガルムと戦い、相打ちとなって果てました。

英語で火曜日を意味する「Tuesday」の由来になりました。「テュールの日」をあらわします。

ルーン文字

北方ゲルマンが使用していた、独自の文字体系がルーン文字である。北欧神話においては、オーディンが見出した呪力を持つ特別な文字とされる。愛のルーン、勝利のルーン、知恵のルーンなどがある。この文字を刻むことで、様々な効果を発揮するとされた。

『ルーン文字:古代ヨーロッパの魔術文字』

バルドル

輝ける光の神がバルドルです。

オーディンと女神フリッグの間に生まれました。

神々の中でもっとも賢明で美しく、万人に愛されたとされます。

それに嫉妬したロキの謀略によって、命を落としました。

神々が冥界から呼び戻そうとするも、これもロキによって阻まれました。

そしてラグナロクによって世界が滅びた後に復活し、弟のホズと共に暮らすとされます。

フリッグ

愛と結婚と豊穣の女神がフリッグです。

オーディンの妻であり、北欧神話における最高位の女神とされます。

人間の運命を知る能力があります。

予言により息子であるバルドルの死の運命を知ると、それを回避するために奔走します。

良き母である一方で、オーディンとはしばしば仲違いも見せます。

ヘイムダル

虹の橋の番人がヘイムダルです。

神々の王国アースガルズと地上をつなぐ虹の橋ビフレスト、その見張り番としての役を担います。

睡眠を必要とせず、優れた視覚と聴覚を持ちます。

昼夜を問わず、100マイル(およそ160km)先まで見通すことができるとされます。

ギャラルホルンという角笛を持ち、最終戦争ラグナロクの訪れを知らせる際に吹き鳴らします。

そのラグナロクにおいては、ロキと戦い相打ちとなりました。

イズン

魔法のリンゴを守護する女神がイズンです。

北欧神話の神々は不死ではないため、老いることがない様に魔法のリンゴを食べる必要があります。

この魔法のリンゴを管理しているのがイズンです。また詩の神ブラギの妻です。

イズンが巨人にさらわれた際には、神々がみな年老いてしまいました。

ブラギ

北欧神話における詩の神がブラギです。

オーディンの息子とされ、長いひげが特徴です。

ハープを演奏しながら詩を語り、アースガルズやヴァルハラを訪れた者をもてなして迎える役割を持ちます。

「スノッリのエッダ」の第2部「詩語法」は、ブラギが海神エーギルに詩について解説するという構成内容になっています。

ウル

狩猟の神がウルです。

並ぶ者のない弓の名手で、トールの義理の息子とされます。

またスキーの腕も優れていました。

優れた戦士であり、決闘を司る神でもあります。

シヴ

女神シヴは、雷神トールの妻です。

その美しい金髪を、ロキがいたずらで全て刈り取ってしまいました。

これを知ったトールが怒ります。ロキは賠償をすると約束して、ドワーフたちに黄金のかつらをつくらせました。

黄金のかつらは魔法の品で、つければ本物の髪と同じになります。

これによりシヴは、以前よりも美しい髪になったのでした。

エインヘリアル

最終戦争ラグナロクに向けて、オーディンのもとに集められた戦士たちがエインヘリアルです。

勇敢な戦死者の魂は、ワルキューレに連れられてオーディンの館であるヴァルハラに集められます。

そこで神々にもてなされ、ラグナロクに備えて戦いの技を磨くのです。

日々訓練に明け暮れ、夜になると盛大な宴を開きます。

ヴァイキングはじめ北方の戦士たちにとって、死後ヴァルハラに迎えられることは、最高の栄誉とされていました。

ヴァイキング

9〜12世紀頃にヨーロッパ各地に侵入した、北方ゲルマン人の総称がヴァイキングである。優れた航海術を持ち、各地で略奪を行う一方で、商業活動も盛んに行なっていた。

『ヴァイキングの歴史 創元世界史ライブラリー』

ベルセルク

無敵の強さを誇る、狂戦士たちがベルセルクです。

英語ではバーサーカーになります。

オーディンの魔術により、驚異的な戦闘能力を持ちます。

戦いの際には、怒り狂った獣のごとき忘我状態となりました。

その際には無敵の鬼神と化し、武器による攻撃からも傷つかなくなると言われます。

しかし、一旦その状態が終わると、極度の疲労により動けなくなります。

漫画作品のタイトルとしても有名ですね。またバーサーカーの別名も、狂戦士の代名詞としてお馴染みです。

中世ヨーロッパの教科書

ワルキューレ

戦場を駆ける、女戦士たちがワルキューレです。

英語だとヴァルキリーになります。

オーディンの命により戦場を駆け巡り、勝敗を決する役割を担いました。

そして戦士たちの魂を、ヴァルハラへと運ぶのです。

鎧かぶとを身にまとった、美しい乙女の姿をしています。

また白鳥に変身することのできる、魔法の羽衣を持っています。

いち早く戦場に駆けつけるために、ワルキューレには天を翔る馬が与えられていました。

様々なファンタジー作品に登場する、お馴染みの存在ですね。またワーグナーの楽劇も有名です。

ニーベルングの指環

リヒャルト•ワーグナーによる楽劇が『ニーベルングの指環』である。北欧神話はじめゲルマンの伝説を主なモチーフとした。ワーグナーが35歳から61歳にかけて、膨大な時間を費やし制作した。4部構成で上演に数日かける、オペラ史上最大の作品である。

『《ニーベルングの指環》教養講座 読む・聴く・観る!』

ノルン

運命を定める3人の女神がノルンです。

ウルズ(運命)、ヴェルザンティ(存在)、スクルド(必然)の3人です。

彼女たちの爪にはルーン文字が刻まれていて、運命を定めるための黄金の糸を持っています。

2人が幸運をもたらし、1人が不運をもたらします。

また、世界樹ユグドラシルの根が枯れない様に、ウルズの泉の水をかけて管理しています。

北欧神話において、世界そのものを体現する巨大な樹が、世界樹ユグドラシルです。

ゲフィオン

国引きの神話で知られる女神がゲフィオンです。

人間の運命を知り尽くしているとされます。

デンマークにあるシェラン島は、ゲフィオンが大陸から土地を引きずり出してつくったとされます。

巨人との間にもうけた4人の子を、魔法で巨大な牡牛に変えて鋤を引かせ、その島をつくり出したのです。

デンマークではこのゲフィオンの物語を、国づくりの神話と捉えています。

このとき削られた土地の跡が、現在のスウェーデンにあるメーラレン湖だとされます。

ヘルモーズ 

死の世界へ赴いた、伝令神がヘルモーズです。

オーディンの息子であり、動きの素早さから俊敏のヘルモーズと称されます。

兄バルドルを蘇らせるため、ヘルの支配する冥界へと旅立ちました。

このときオーディンから、愛馬スレイプニルを貸し与えられます。

そして、バルドルを呼び戻す交渉をヘルと交わします。

バルドルたちからの贈り物を手に、ヘルモーズは冥界から帰還します。

しかし、ロキの妨害によって、復活は失敗に終わりました。

ヴィーザル

ラグナロクにおける宿命を背負いし神、それがヴィーザルです。

オーディンの息子であり、トールに匹敵する実力を秘めています。

なのに普段は無口でほとんど活躍を見せず、森の中に隠遁しています。

しかしながら、これは最終戦争における戦いに向けて、その力を蓄えていたと考えられます。

自らの宿命と、その役割を心得ていたのです。

そして来たるラグナロクにおいて、巨浪フェンリルを打ち倒し、父の仇を討ちました。

オーディンを飲み込んだフェンリルの顎を踏んで引き裂き、剣によってトドメを刺しました。

またラグナロクを生き延びると、世界の滅亡と再生を見届けます。

そして復活したバルドルらと共に、新しい世界の神となりました。

ソールとマーニ

太陽と月の運行を司るのが、ソールとマーニです。

太陽をソールが、月をマーニが担当しています。2人とも金髪で、美しい外見をしているとされます。

空をかける馬車に乗り、それぞれ太陽と月を引っ張っています。

元々は人間でしたが、神々の怒りに触れ、太陽と月を運行することになりました。

そして彼らは、2匹の狼スコルとハティに絶えず追われています。

ラグナロクの際には、この2匹に追いつかれ太陽も月も飲み込まれるとされます。

『オーディンの箴言』

ノート

北欧神話における夜の女神がノートです。

ネルという巨人の娘で、黒髪でその姿も生まれつき黒かったとされます。

彼女は3度結婚しました。そして最後の夫との間に、息子のダグをもうけました。これが昼の神になります。

オーディンは彼女とその息子を呼び、それぞれに馬車を与えると、世界を周り続けるように命じました。

こうして昼と夜が出来上がったとされます。

ダグ

北欧神話における昼の神がダグです。

夜の女神ノートの息子になります。スキンファクシという馬が引く馬車に乗りました。

この馬の輝くたてがみが発する光が、空と大地を照らしたとされます。

『エッダ』

北欧神話の主な原典とされるのが『エッダ』という写本である。9世紀から13世紀にかけて、主にアイスランドで編纂された。北方ゲルマンが語り継いできた伝説を、詩の形でまとめ上げたものである。「詩のエッダ(古エッダ)」と「スノッリのエッダ」の2種類がある。古ノルド語で書かれた。

ヴァン神族

豊穣と平和をつかさどる神々がヴァン神族です。

その名は「光り輝く者」を意味し、ヴァナヘイムという世界に住まうとされています。

かつてアース神族と対立し、戦争を行いました。

その後に和解し、両者は同盟関係にあると考えられます。

ニョルズ

海運と豊穣をつかさどる、ヴァン神族の神がニョルズです。

航海や漁業の守護者で、風の進路を支配し、海を鎮める能力があります。

アース神族とヴァン神族の講和の際に、人質としてアースガルズに送られました。

そこで巨人の娘スカジと結婚します。

ラグナロクには参加せず、ヴァナヘイムへ帰還しました。

フレイ

ヴァン神族の豊穣神がフレイです。

ニョルズの息子で、女神フレイヤの兄です。またスキールニルという召使いを従えています。

雨と太陽をつかさどり、大地の成長を支配し、人々に富を授ける能力を持ちます。

刀身にルーン文字が刻まれた魔法の剣を持ち、金色の毛をしたイノシシを連れています。

フレイの持つ剣は、正しき者が持てば力を発揮し、巨人をもひとりでに倒すとされます。

しかし、巨人の娘ゲルズの愛を手に入れる代償に、この剣を手放してしまいます。

魔法の剣を失ったフレイは、ラグナロクにおいて巨人スルトに敗れ去りました。

フレイヤ

愛と豊穣をつかさどる、ヴァン神族の女神がフレイヤです。

ニョルズの娘で、フレイの妹です。

人々の恋愛を聞き入れる女神であり、自身も恋愛には奔放でした。

また魔術にも長けていて、セイズという魔法を操ります。

そしてオーディンはじめ、アース神族に魔術を教えます。

出かけるときは、2匹の猫に引かせた戦車に乗りました。

死者を迎える役割も持ち、戦死者の魂をオーディンと分け合うとされます。

英語で金曜日をあらわす「Friday」の由来となりました。また元素のバナジウムも、フレイヤの別名バナディスが由来となっています。

『サガ』

エッダと共に、北欧神話の原典とされるのが『サガ』である。12世紀から14世紀頃のアイスランドで発展した、散文形式の長編文学である。古ノルド語で書かれた。エッダが神話を主な題材とするのに対して、『サガ』は歴史的な出来事を主な題材とした。

巨人族

神々に匹敵する強大な力を持つのが、ヨトゥンと呼ばれる巨人族です。

ヨトゥンヘイムという世界に住まうとされています。

神々とは敵対関係にあり、衝突を繰り返します。

最終戦争ラグナロクは、神々と巨人族との争いです。

原初の巨人ユミルを祖とし、オーディンはじめアース神族とは、遠いながらも血縁関係にありました。

巨人というより、怪物である存在もいます。

また女性の巨人などは、美しい容姿で女神に近い者もいます。

大きさも、人間サイズから途方もない巨体まで様々です。

ユミル

北欧神話における、すべての始まりとなった原初の巨人がユミルです。

世界の始まりには、炎と氷しか存在しませんでした。

その両者が混じってできた霜の中から、巨人ユミルが生み出されます。

このときアウズンブラという牝牛も一緒に生まれます。

ユミルは単独で、ヨトゥンの巨人たちを生み出していきました。

またアウズンブラからは、ブーリという最初の神が生まれます。

神と巨人が交わった子孫から、オーディン、ヴィリ、ヴェーという3人の神が生まれました。

彼らはユミルを殺害し、その体を利用して世界を創造しました。

『進撃の巨人』でもお馴染みの始祖の巨人ですね。

ロキ

混沌をもたらす悪戯好きの神であり、変幻自在のトリックスターがロキです。

純粋な巨人族ですが、オーディンと義兄弟の契約を交わしており、アースガルズに神として迎えられます。

狡猾でひねくれた性格で、悪知恵によって様々な混乱をもたらしました。

魔術に長けていて、様々な姿に自在に変身できます。

また、フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルという怪物たちを生み出しました。

しかし完全な邪悪という訳ではなく、神々をしばしば窮地から救うこともあります。

バルドルの殺害後は、神々とは敵対することが多くなります。

そしてラグナロクの際には、巨人族や死者の軍団を率いてアースガルズに攻め入るのでした。

最後はヘイムダルと相打ちとなって果てます。

『北欧神話の教科書』

フェンリル

神々に災いをもたらすと予言された、巨大な狼がフェンリルです。

とてつもない巨体を持ち、鼻や口からは煙と炎が噴き出しているとされます。

ロキと女巨人との間に生まれました。

不吉な予言とその強大な力から、神々はフェンリルに脅威を抱きます。

そしてフェンリルに嘘をついて騙し、グレイプニルという魔法の縄で拘束しました。

これを成功させたのが軍神テュールでしたが、その際に右手を食いちぎられます。

神々の脅威は抑え込まれたものの、それは最終戦争までの一時的なものでした。

そしてラグナロクにおいて拘束を断ち切ったフェンリルは、オーディンと対決し飲み込みます。

しかしその直後、オーディンの息子ヴィーザルによって討ち取られたのでした。

ヨルムンガンド

世界を一周するほどの、巨大な大蛇がヨルムンガンドです。

その大きさはミズガルズの大陸を一周し、自分の尻尾を咥えるほどだとされます。

フェンリルと同じくロキの子どもです。また雷神トールの宿敵でもあります。

神々の脅威となると予見され、生まれてすぐ海に捨てられました。

しかし死なずに成長し、とてつもない巨体を持つ怪物になります。

最終戦争ラグナロクにおいては、大陸に大津波を巻き起こし、そして因縁のトールと対決するのでした。

トールは見事ヨルムンガンドを倒しますが、その毒を浴びせられ自らも倒れます。

己の尾を咥える竜のイメージは、世界中の神話に共通して見られます。ウロボロスとも呼ばれ、永遠性、死と再生、完全性などを象徴します。

神話と心理学との関係

神話は心理学とも密接な関係がある。心理学の権威ユングは、人には「集合的無意識」があることに注目した。誰であれ無意識の深層には、神話的な共通のパターンがあるというものである。ユングはこれを元型(アーキタイプ)と呼んだ。

『教養としての心理学101』

ヘル

北欧神話における、冥界の支配者がヘルです。

地下にある死者の世界、ヘルヘイムを治めている女の巨人です。

ロキの子どもであり、フェンリル、ヨルムンガンドとの三兄妹です。

他の兄妹と同じく、ヘルも災いをもたらす者とされ、ニブルヘイムという極寒の世界に追放されました。

その後オーディンから、戦死者以外の死者たちを支配する役目を与えられます。

そしてヘルヘイムという世界を築き、そこに君臨することとなりました。

身体の半分は、青黒く腐っているとされます。

また、バルドルを救いに冥府に赴いたヘルモーズと、交渉を行っています。

ラグナロクにおいては、死者の軍団をロキに預けました。

ヘル自身が参加したかどうかは、記述はなく不明です。

スコルとハティ

スコルハティは、太陽と月を追いかける2頭の狼です。

巨浪フェンリルの子どもたちです。

北欧神話では、太陽と月はそれぞれの神によって運行されています。

これを絶えず追いかけているのが、スコルとハティの2匹です。

スコルは太陽を、ハティは月を追いかけています。

これにより太陽も月も、また登ってはまた沈みを繰り返している訳です。

ラグナロクの際には、この2匹が追いついて、太陽も月も飲み込まれるとされます。

ファンタジーと北欧神話

現代ファンタジーの基本は、J・R・R・トールキンによる小説『指輪物語』により形づくられたとされる。エルフやドワーフ、オークなどの定番キャラも、この作品によるイメージが強く普及している。そしてこの作品は、北欧神話に大きく影響されたものである。

『新版 指輪物語〈1〉/旅の仲間』

フルングニル

雷神トールと決闘を行った巨人がフルングニルです。

ものすごい巨体を持ち、また名馬グルファクシを所有していました。

オーディンの挑発からアースガルズに踏み入ると、罵詈雑言を吐いて横暴を働きます。

これに怒ったトールと決闘を行いました。

フルングニルは砥石を投げつけ、トールは雷鳴と共にミョルニルを投げつけます。

空中で二つがぶつかると、砥石はバラバラに砕け、ミョルニルは巨人の頭蓋骨を粉砕しました。

フルングニルは倒れますが、その巨体にトールが下敷きにされます。

この巨人の体を持ち上げ、トールを救い出したのがマグニでした。

ヴァフスルーズニル

豊富な知識を持つ老巨人が、ヴァフスルーズニルです。

オーディンと知恵比べを行いました。

基本的にオーディンは、知識を求めて旅をしています。

そしてヴァフスルーズニルの知識を欲して、名を偽りその館を訪ねたのでした。

ヴァフスルーズニルは、最後の質問で相手の正体に気づき、敗北を宣言しました。

エーギル

海の支配者がエーギルです。海神とも呼ばれます。

水死者の魂も支配しています。

巨人族ですが、どちらかというと神に近く、アース神族とも良好な関係を持っていました。

互いを招いて、酒宴を催すこともありました。

スカジ

豊穣神ニョルズの妻が、女の巨人族であるスカジです。

巨人と言っても、巨体でも怪物でもなく、美しい女性の容姿をしています。

巨人族ですが、どちらかというと女神だと言えます。

山をつかさどる神であり、弓やスキーが得意です。

ヴァン神族の豊穣神ニョルズと結婚しました。

しかし、海の神であるニョルズとは合わず、その後別れることとなります。

最終的にオーディンと結ばれ、ノルウェー王家の始祖となったとされます。

スリュム

雷神トールから戦鎚ミョルニルを盗んだ巨人がスリュムです。

裕福な暮らしをしている巨人の王でした。

あるときミョルニルが無くなっているのに気づいたトールは、ロキに相談します。ロキは探索を行い、スリュムの仕業だと突き止めました。

そしてスリュムは、ミョルニルと引き換えに女神フレイヤとの結婚を要求します。

これに対してトールが花嫁に、ロキが侍女に変装してスリュムの元へ乗り込みました。

結婚式ではトールが様々なボロを出すものの、ロキがうまくフォローします。

そしてスリュムは花嫁を清めるため、ミョルニルを持って来させました。

トールはミョルニルを手にするや否や、スリュムはじめその場の巨人たちを皆殺しにしたのでした。

ゲルズ

豊穣神フレイの妻となった、巨人族の女性がゲルズです。

あらゆる女性の中で最も美しいとされ、手を上げた際の腕の美しさは、世界を照らすほどだとされます。

このゲルズに一目惚れしたのが、ヴァン神族の豊穣神フレイでした。

そしてゲルズを妻とするために、自身の魔法の剣を手放したのでした。

なぜ現代において神話なのか?

テクノロジーの発展した現代においても、なぜ神話が必要とされるのか?それは神話という価値体系は、人間の芸術や文化と密接に関わるものだからである。いわば神話とは「人の精神を支える基盤」とも言えるものなのである。

スァツィ

女神イズンをさらった巨人がスァツィです。

大鷲に変身できる能力があります。

旅の途中の神々をからかい、ロキを捕らえました。そしてロキに解放の条件として、イズンの誘拐に協力させます。

イズンが誘拐されると神々はロキを責め立て、イズンの救出に向かわせました。

ロキは女神フレイヤに魔法の羽衣を借りると、鷹に身を変えて巨人の館に侵入しました。

そしてイズンの姿を木の実に変えて咥えると、巨人の国から無事奪い返してきたのでした。

ロキによってイズンが無事奪還されると、スァツィはまた大鷲に変身して後を追います。

そこで神々たちに炎の中に放り込まれて殺されました。

『北欧神話の幻獣たち』

ゲイルロズ

雷神トールを倒そうと画策した巨人がゲイルロズです。

あるとき鷹に変身して飛んでいたロキは、ゲイルロズに捕らえられました。

彼はロキに丸腰でトールを城に連れてくるよう要求して、ロキはこれに同意します。

トールは罠にハマるものの、女巨人のグリーズから何が起きているかを知らされます。そして鉄の手袋と魔法のベルトと杖を渡されました。

城へ向かう途中、ゲイルロズの娘たちから襲撃されるも、トールはこれを撃退します。

そしてゲイルロズと対決すると、トールは投げつけられた鉄塊を投げ返して殺したのでした。

ヒュロッキン

怪力無双の女巨人がヒュロッキンです。

毒蛇を手綱にして、狼に跨っています。バルドルの葬儀の場面に登場します。

バルドルの葬儀は舟葬で、遺体はフリングホルニという巨大な船に寝かせられました。

そのとき神々は陸から船を進水させようとしますが、船が大きすぎてなかなか上手くいきませんでした。

そこでヨトゥンヘイムから、女巨人のヒュロッキンが呼ばれます。とてつもない怪力のヒュロッキンは、一押しで船を海へと進ませました。

しかし、この時のやり方が乱暴だったので、雷神トールが激しく怒り、ヒュロッキンの頭をミョルニルで叩き割ろうとします。

それを他の神々が、なだめて落ち着かせたのでした。

スクリューミル

雷神トール一行が出会った、とてつもなく巨大な巨人がスクリューミルです。

あるとき雷神トールは、仲間たちとヨトゥンヘイムに赴きました。

そして森の中で小屋を見つけると、そこをその晩の宿にします。すると夜中に物凄い地震が起こりました。

翌朝になり、地震の正体が側で寝ていた巨人のいびきの音だとわかります。

この巨人がスクリューミルでした。

またトールたちが小屋だと思っていたのは、スクリューミルの巨大な手袋でした。

そしてこのスクリューミルの正体は、巨人の都の王、ウトガルザ・ロキでした。

ウトガルザ・ロキ

巨人の都の王が、ウトガルザ・ロキです。

ヨトゥンヘイムにある、ウトガルズという都市を治めています。

ロキとはまったくの別人です。

強力な幻術の使い手で、また知略にも長けます。

雷神トールの一行がウトガルズを訪れた際に、その幻術によって翻弄しました。

ラグナロクに関する記述は特にありません。

スルト

世界を焼き尽くす、炎の巨人がスルトです。

ムスペルヘイムという炎の世界に住まい、その入り口を守っています。

燃え盛る炎の剣を手にしているのが特徴です。

ラグナロクにおいて、ムスペルヘイムの軍勢を率いて侵攻しました。

彼らの勢いは凄まじく、虹の橋ビフレストは崩れ落ちます。

スルトは豊穣神フレイを打ち倒すと、その炎によって全世界を焼き尽くしました。

そして世界は一旦滅び、生き残った神々によって、新しく創造されることとなります。

『シリーズ魅力溢れる北欧神話の世界』

まとめ

北欧神話に登場する神々を、一覧で紹介しました。

とても個性豊かで魅力溢れる面々です。

それは北方ゲルマン民族の、文化や精神を象徴した存在だと言えます。

また北方の厳しい自然環境に育まれたものだと伺わせます。

そしてこの魅力的な神々は、現代においても様々なところに息づいているのです。