シュールレアリスムとは何でしょうか?
それは20世紀の前半に起こった、人間の無意識を表現しようとする芸術様式です。
常識や固定観念、道徳や倫理などを排して、人の心が持つ神秘や謎を表現しようとしました。
そして芸術家たちは、奇妙で不思議な作品をつくり出しました。
ここでは、そんなシュールレアリスムをわかりやすく解説しています。
僕は大学で西洋史を専攻していました。西洋の文化や歴史なら任せてください。
シュールレアリスムとは何か?
20世紀に入ると、心理学の研究が盛んになりました。それは、人の心を探究する新しい学問でした。
そして、芸術活動もその影響を受け、人間の深層心理にある無意識を表現しようとし始めます。
それがシュールレアリスムです。
現実的な常識や道徳的な価値観を捨て、無意識下にある未知の世界のイメージ化を目指しました。
フロイトの精神分析に大きく影響を受けています。
具体的な始まりとして、1924年に文学者のブルトンが「シュールレアリスム宣言」を発表し、その運動が活発化していきました。
シュールレアリスムを代表する芸術家たち
シュールレアリスムでは、現実の価値観や道徳観、物理法則などを、意図的に無視または破壊します。
それは人間の理解の及ばない無意識の世界、また超自然的な世界をイメージ化したものです。
そうして、なんとも奇妙で不思議な世界がつくりあげられていきました。
代表的な芸術家には、マグリット、ダリ、キリコなどがいます。
マグリット
ルネ・マグリットは、シュールレアリスムを代表するベルギーの芸術家です。
どこか不思議でどこか不気味、固定観念を壊す、現実と夢が半々の様な世界観が特徴的です。
ポップで鮮やかなタッチで、だまし絵とも言える作品をつくりあげました。
哲学的な観念も取り入れており、言語とその認識の関係を扱った作品などもあります。
そのようにマグリットは、人の認識そのものに挑戦する様な作風を得意としていました。
その世界観は、ポップカルチャーやサブカルチャーにも、大きく影響を与えています。
マグリットの作品は、とてもSF的な雰囲気に満ちていますよ。
ビートルズの設立したアップル・レコードのデザインは、マグリットの作品がその由来と言われています。マグリットはその作品の中において、しばしば青いりんごのモチーフを扱っています。そしてメンバーのポール・マッカートニーが、マグリットの作品を所持しており、それをヒントにデザインをしたそうです。
ダリ
サルバドール・ダリは、シュールレアリスムを代表するスペインの芸術家です。
上にピンと跳ねさせたカイゼル髭と、目を大きく見開いた顔がトレードマークとして有名です。
エネルギッシュで混沌と狂気に満ちた、独自の世界観をつくり上げました。
また奇怪な言動で世間の注目を集め、大変な人気者でもありました。
それらは奇人を演じたパフォーマンスであり、友人たちの前では常識人であったとされます。
ダリは講演会で潜水服を着て、危うく死にかけたことがあるそうです。
世界的にも有名なキャンディーであるチュッパチャプスは、誰もが一度は見たことがあると思います。このチュッパチャプスのロゴマークは、なんとダリがデザインしたものです。1969年に、創業者がダリに依頼して考案されました。
キリコ
ジョルジョ・デ・キリコは、シュールレアリスムを象徴するイタリアの芸術家です。
形而上絵画を提唱し、シュールレアリスム美術の先駆者となりました。
神秘的でありながら、どこか不安や寂しさを感じさせる作風が特徴的です。
まとめ
シュールレアリスムを、わかりやすく解説しました。
それは、無意識という人間の理解の及ばない世界を、現実の認識できる事象を用いて、イメージ化したものです。
20世紀の心理学の発展も、その背景として大きく関わっていました。
芸術家たちは様々な方法で、人の心の内にある、神秘や謎を表現しようと試みたのです。