最近は日本でも、北欧神話が広く知られる様になりました。
映画やドラマ、アニメや漫画にゲームなど、多くの人気作品の中にも、そのモチーフが見て取れます。
その知名度はさらに上がっており、「もっと北欧神話を知りたい」という人も増えていると思います。
しかしながら日本においては、北欧神話の原典というのは、まだまだほとんど知られていません。
北欧神話の人気や知名度自体はとても上がっていますが、その純粋な原典の内容は、知られていない部分が多いのです。
これは非常にもったいないと思いました。
欧米などでは普通に人気があり、よく読まれているんです。そして実際にとても面白いです。
という訳で、僕自身で北欧神話の原典の世界を、見やすくまとめて紹介しようと思い立ったのでした。
まず北欧神話の原典となるのは『エッダ』および『サガ』と呼ばれる写本です。
ともに中世のアイスランドにおいて編纂されました。
今回僕がまとめたのは、北欧神話の原典『エッダ』の中における詩の一つ、「オーディンの箴言(しんげん)」です。
「オーディンの箴言」は、伝説や物語というよりも、様々な警句や処世訓をまとめた格言集でした。
エッダの中でも、とてもユニークな存在です。どちらかと言えば、哲学や思想に近い部類のものです。
それを最高神であるオーディンが語りかける、という形式をとったものです。
「高き者の言葉」という呼び方もされます。
この詩集は、全能神オーディンが自身の言葉として残した、教訓や知恵を集めたものとされます。
オーディンは、知識、戦争、詩歌、魔法など、多岐にわたる領域での知恵を持つ神です。
その箴言には、様々な分野での人生の指針が含まれています。
古代から中世における、北方ゲルマン人たちの文化や精神そのものと言えるかもしれません。
「オーディンの箴言」はじめエッダの文書は、世界でも多くの人々に愛読され、人生の指針として参考にされています。
ここでは、谷口幸男訳『エッダ―古代北欧歌謡集』から、なるべく原文に近いまま編訳してあります。
そこからは、古代から中世における、北方ゲルマンの精神性を感じることができます。
エッダは、はるか昔に書かれた、古典文学の一つとも言えます。
こうした古典というものは、知恵の宝庫です。現代においても通じるものが沢山あります。
人間の本質というのは、遥か昔から変わっていない、ということがよくわかります。
何を重んじて、何を嫌うのか。
何に喜び、何に悲しむのか。
いつの時代においても、普遍的な価値観。人としてのあり方。
古典文学には、こうした多様な価値が含まれており、読者にとって様々な恩恵をもたらしてくれるのです。
そして神話とは、フィクションによってつくられた古典と言えるものであり、人間の精神性そのものです。
ぜひ一度、はるか遠い昔に北欧で培われた世界観と、知恵の言葉を感じてみてください。