油絵で人物画を描いてみたくないですか?
やはり人物は描くモチーフとして魅力的ですよね。
人物画は花形であり王道のモチーフと言えます。
しかし、一方でなかなか描写するのが難しいものです。
特に初心者は苦戦しやすいと思います。
そこで、油絵での人物画の描き方の手順とコツを、分かりやすく解説したいと思います。
実際に描いているメイキングと共に、ポイントを抑えながら説明していきます。
自分の好きな様に、油絵で人物を描いてみましょう。
やはり人物画は人気があります。はじめは難しいと思いますが、挑戦する価値がありますよ。
どんな分野でも言えることですが、まず事前準備が非常に重要です。
これをするとしないでは、結果に雲泥の差が出ます。
油絵の制作の際に必要なのは、
まず、構想やアイデアやコンセプトをよく考えること。
そして、構図や明暗や配色を把握し、どう描き進めるかよくイメージしておくことです。
面倒かもしれませんが、その方が作業は格段にスムーズに進みます。
結果的に時間がかかりません。
テクニックよりも、まず自分が何を表現したいかが大切です。
それでは、人物画を実際に描く手順を見ていきます。
メイキングと共に、詳しく説明していきますよ。
力まずに楽しんで描いていきましょう。
入門書としては『油絵Style & Process』がおすすめです。
まずキャンバスに下絵を描きます。
おつゆ描き、木炭、カーボン転写などを用います。
ここでは、木炭で描いてあります。また、キャンバスには下塗りをしてあります。
特にどの方法を選ぼうと自由です。僕自身も描く絵によって適宜変えています。
また下塗りには、ジェッソやアクリル絵の具がおすすめです。
おつゆ描きとは、油絵の具をオイルでとても薄く溶いて描く方法です。
ペトロールやテレピンといった揮発性油を用います。
早く乾いて、ツヤのないマットな状態になります。
おつゆ描きは手軽ですが、細部までは描きこめません。
木炭は、デッサン用の木炭を用いて、キャンバスに描く方法です。
木炭は手軽ですが、定着力が弱いです。
描いた後に、フィキサチフなどで線画を保護するといいでしょう。
カーボン転写は紙などに描いた線画を、カーボン紙を用いてキャンバスに写す方法です。
要はトレースですね。
カーボン転写はやや手間ですが、細部まで描き込めます。木炭同様に線画を保護するといいです。
本塗りに入る前に、使う色をあらかじめパレットにつくっておきましょう。
あまり馴染みのないものだと思います。しかし、油絵では非常に重要な作業なんです。
その方が、その場で色をつくりながら描くよりも、遥かにスムーズに作業が進むからです。
油絵は粘性の高い絵の具なので、混色は筆ではなくペインティングナイフを用いるのが一般的です。
そのため描きながら色をつくっていては、非常に手間取るのです。
配色を事前によく考え、使うであろう色をつくっておきましょう。
油絵の描き方は「暗部から明部」の順番が基本です。
デジタルで言うところの厚塗りですね。
なので、暗部から描いていきましょう。
今回は直射日光によるライティングです。
日光は暖色の光なので、日陰は寒色になります。
そのため日陰の色味は「固有色+ブルー」で描きます。ウルトラマリンがおすすめです。
少し専門的な話ですが、
暖色の光による暗部は、寒色寄りになります。寒色の光による暗部は、暖色寄りになります。
難しいかもしれませんが、超重要な光と色のルールです。
「ひなたは暖色、日陰は寒色」と覚えておくといいですよ。
リアルな描写に欠かせない要素がハーフトーンです。
中明部のことで、要は暗部と明部の間の、中間の明るさの色味のことです。
ハーフトーンを描くことで、より立体的で本物らしく見えます。
反射光が当たる部分や、ひなたと日陰の境目などが、代表的なハーフトーンです。
よく観察して描き込んでいきましょう。
ハーフトーンは、固有色の色味で描くとうまくいきやすいです。
反射光とは、光源からの光を物体が反射して出来る光のことです。
地面からの光が最もよく現れる反射光です。
物体の陰の部分に反射光がよく見られます。
あごの下、鼻の下など、下を向いている面に強く反射光が当たります。
実際に日常の中で観察してみましょう。様々なところの反射光が見つかりますよ。
固有色の鮮やかな色味が、最もよく見えるのが「ひなたと陰の境目」です。
陰に切り替わる直前の部分に固有色を塗ると、より本物らしいリアルな描写になります。
では、明部を描いていきましょう。
あまりちびちび描かず、大きいストロークで伸び伸び描くのがコツです。
また、どうしても明部が目を引くので、初心者はそこに意識を取られがちです。
もちろん明部も重要ですが、暗部やハーフトーンの設定も同じくらい重要です。
それがないと、明部はちゃんと明るく見えません。
固有色にホワイトを加えただけでは、ひなたは明るく輝いて見えません。
日光は暖色の光だからです。
ひなたは「固有色+明るい暖色+ホワイト」で描くといいです。
暖色はジョーンブリヤンという、明るい肌色の絵の具がおすすめです。
室内の蛍光灯や曇りの場合は、光の種類は寒色です。固有色にホワイトを混ぜるだけで明るく見えます。
背景も基本は同じです。描きすすめる順番は暗部から明部です。
そして、ひなたは暖色、日陰は寒色です。
また、なるべく大きい筆で描くのがコツです。
僕は背景を描く際に、日本のアニメーターの技術を参考にしています。実用的で、油絵でも問題なく応用できるんです。
風景を描くときに重要なコツは「単純化」です。
細部は気にせず、なるべくシンプルな形で捉えます。球体、円柱、箱型などですね。
また枝の一本一本や、葉の一枚一枚などを捉えようとしてはいけません。
なるべく大きくシンプルなかたまりで捉えます。
地面を描くコツは、遠近をちゃんと意識することです。
地面は単純なので、初心者はベターっと単調に塗りがちです。
地面もちゃんと遠近による描き分けが必要です。
簡単なコツは、「手前ほど濃く、奥ほど淡く」です。
陰影や彩度を、手間ほど強く奥ほど弱く描きましょう。
手前には描き込みを多く、奥には少なくするのも有効です。
空を描くコツは、雲の配置によるスケール感の演出です。
雲をうまく描写することで、空の広大さを表現出来ます。
まず、上の方の雲ほど大きく、下の方の雲ほど小さく描きましょう。これも遠近法です。
また、雲は部分的に画面からはみ出す様にしましょう。空の広さがよく表現出来ます。
少し上級な描き方を紹介します。
ここでも用いている僕がよく使うテクニックなのですが、わざと背景をボカすことです。
背景のエッジをクッキリさせずボカすことで、よりリアルで本物らしい描写になるのです。
ちょうど一眼レフカメラで撮影したように、人物が浮かび上がります。
より肉眼で見た感じに近くなる訳です。要はピントの調節ですね。
こうしたピントの合う範囲を、「被写界深度」と言います。
ウェットオンウェットで、大きい筆で描いていくのがコツです。
被写界深度によるボケは、デジタルだと簡単に表現出来ますね。最近はアニメでも頻繁に使われています。
明部の上から、さらに明るい色を加えていきます。
最も明るい明部は、乾燥後に描いても構いません。
最後にハイライトを描き込んで完成です。
お疲れ様でした!
やはり人物画は描いていて楽しいです。
最初は難しいと思いますが、是非チャレンジしてみて欲しいです。
大切なのは基本を抑えること。
何度も挑戦し、うまくいかないときは何故かをよく考えること。
そして何より楽しんで取り組むことです。